妻の夜勤中、押しかけ義妹に「開発」されています
真帆と結婚して半年。「幸せ」を絵に描いたような新婚生活。 看護師の妻が夜勤でいない夜、寂しい俺の元にやってきたのは、妻の妹・結菜ちゃんだった。 「お義兄さん、マッサージしてあげます」 最初はただの親切だと思っていた。 けれど、義妹の指先は、徐々に危険な領域へと滑り込んでいき……。
真帆と結婚して、半年が過ぎた。
「幸せ」という言葉がこれほど陳腐に、しかしこれほど的確に現状を表すものだとは思わなかった。都心から少し離れたマンション。二人で選んだ家具。週末に二人で出かける近所のスーパー。その全てが愛おしく、輝いて見えた。
「いってきます。戸締り、よろしくね」
「ああ、いってらっしゃい。無理するなよ」
「はーい。あ、冷蔵庫に昨日の残り物あるから、チンして食べてね」
玄関先で、真帆が振り返る。
「それと、キス」
「はいはい」
軽く唇を合わせる。柔らかく、温かい感触。
「……よし、充電完了。じゃあ、本当に行ってきます!」
ぱたぱたと慌ただしく去っていく背中を見送る。
真帆は看護師だ。総合病院の救命救急センターに勤務しており、その生活は不規則を極めていた。
「ごめんね、今週、夜勤三回も入っちゃって……」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げる妻は、俺にとって自慢の妻だった。人の命を救う仕事。尊敬している。
だが、新婚だというのに、夜、この新居に一人でいる時間は、思った以上に多かった。
真帆の優しさが染み付いたリビングで、一人分のパスタを湯切りする。静まり返った部屋に、換気扇の音だけが虚しく響いていた。
「お義兄さん、こんばんはー」
そんな俺の孤独な夕食事情を劇的に改善してくれたのが、真帆の妹、結菜ちゃんだった。
「結菜がさ、お兄さん一人じゃ心配だから、家事手伝いに行くって言ってくれて。合鍵、渡しといたから」
真帆からそう聞いた時は、さすがに遠慮した。結菜ちゃんは専門学生で、姉の家に通うとはいえ、年頃の女性だ。俺と二人きりになるのは、色々とまずいだろうと。
だが、真帆は「大丈夫大丈夫! 結菜は家族なんだから!」と笑い飛ばし、結菜ちゃん本人も、けろりとした顔で「お姉ちゃんに美味しいご飯の作り方教わったんで、お義兄さん、毒見役よろしくです」なんて言って、あっけらかんとしていた。
結菜ちゃんは、真帆とはまた違うタイプの魅力を持っていた。
ふんわりと優しく、家庭的な雰囲気の真帆に対し、結菜ちゃんは活発で、少し派手な印象だ。明るく染めた髪に、流行りのメイク。服装も、専門学生らしい若々しさに溢れている。
すらりとした手足に、姉よりもやや小柄だが、Tシャツの上からでもわかる確かな起伏。
もちろん、俺は真帆の夫だ。そんな義理の妹に邪な感情など抱くはずもなかった。
当初は。
「お義兄さん、今日もお疲れ様です! 今日はハンバーグにしましたよ」
「うわ、ありがとう。いつも悪いね」
「いーんです。お姉ちゃんとの約束なんで」
二人で食卓を囲む。結菜ちゃんは甲斐甲斐しくご飯をよそい、味噌汁を運んでくれる。その姿は、まるで「小さな新妻」のようだった。
(……いや、何を考えてるんだ、俺は)
頭を振って、邪念を追い払う。
「どうです? お味は」
「うん、美味い。すごく美味いよ。真帆より上手いかも」
「えー、それお姉ちゃんに言ったら怒られますよ?」
きゃらきゃらと笑う結菜ちゃん。ふと、真顔になって俺を見た。
「……なんか、お義兄さん見てると、お姉ちゃんちょっとズルいなって思っちゃいます」
「え?」
「ううん、こっちの話。お姉ちゃん、昔から私のお気に入り、先に取っちゃうんだよねー。あ、冗談ですよ、じょーだん!」
この、家族としての温かい距離感。それが、俺の心の隙間に静かに、だが確実に染み込んでいっていた。
その夜も、真帆は夜勤だった。
俺はと言えば、月末の繁忙期が重なり、終電間際まで会社で神経をすり減らしていた。
くたくたになって玄関のドアを開けると、リビングの明かりが漏れていた。
「……あれ?」
真帆はいないはずだ。まさか、泥棒か?
そっとリビングを覗き込むと、ソファで小さな影が丸くなっていた。
「……結菜ちゃん?」
「……ん……あれ、お義兄さん? おかえりなさい……」
眠い目をこすりながら、結菜ちゃんが起き上がる。時刻はもう、深夜一時を回っていた。
「どうしたんだ、こんな時間まで。帰らなかったのか?」
「お義兄さん、連絡なかったから。もしかして倒れてるんじゃないかって……お姉ちゃんも心配するし……」
そう言って、結菜ちゃんはふわりとあくびをした。
「ごめん、スマホの充電、会社で切れちゃって……。夕飯は?」
「食べましたよ。お義兄さんの分、一応取ってありますけど……もう冷めちゃった」
「いや、いいよ。食欲ない。それより、送るよ。もうこんな時間だし」
「うーん……でも、今から帰るのも面倒だなぁ……」
結菜ちゃんはそう言うと、ソファの上でぐでーっと大の字になった。
薄手のニットワンピースが、重力に従って体のラインを露わにする。
「こら、はしたないぞ」
「いーじゃん、家族なんだし。……あ、そうだ」
結菜ちゃんが、むくりと起き上がった。
「お義兄さん、すっごい顔色悪いですよ。肩、凝ってるでしょ」
「まあ、月末だからな。大丈夫だよ、寝れば治る」
「ダメです。そういうのが蓄積するんです」
そう言うと、結菜ちゃんは俺の背後に回り込み、なんの躊躇もなく俺の肩に手を置いた。
「うわ、ガッチガチ。石みたい」
「あ、おい、結菜ちゃん……」
「いいから、座っててください」
ぐい、と肩を押される。俺の疲労困憊の体は、抵抗する気力もなくソファに沈んだ。
結菜ちゃんが、俺の肩を揉み始める。
「学校で、マッサージの実習とかあるんですよ。結構、評判いいんだから」
「へえ、そうなんだ……」
小さな手だった。だが、指先にしっかりと力が入っている。
凝り固まった筋肉に、きゅ、きゅ、と指が食い込んでくる。
「……あー……そこ、気持ちいいかも……」
「でしょ? ここが、こう……」
指が、肩甲骨の周りを滑る。
「ん……っ」
思わず、変な声が出た。
「ふふっ。お義兄さん、感じやすい?」
耳元で、くすくすという笑い声が聞こえる。
近い。シャンプーの、甘酸っぱい匂いが鼻腔をくすぐった。
「や、そういうんじゃ……」
「いいですよ、我慢しなくて。疲れてるんですから」
結菜ちゃんの手は、肩から首筋へと移動していた。
指の腹が、耳の後ろを優しくこする。ぞくぞくとした感触が背筋を駆け上った。
「お義兄さんのYシャツ、アイロンかけるの私なんですよ。知ってました?」
「え、あ、そうなの? 真帆かと思ってた」
「お姉ちゃん、家事ぜんぜんダメだもん。こういうの、全部私」
結菜ちゃんの手が、Yシャツの襟元から、するりと内側に入ってきた。
「……っ!?」
素肌に、直接指が触れる。
「ちょ、結菜ちゃん、ダメだ……!」
俺は慌ててソファから立ち上がろうとした。真帆の顔が脳裏をよぎる。
「何がダメなんです? 服の上からじゃ、やりにくいじゃないですか」
結菜ちゃんは悪びれる様子もなく、俺の胸元を指先でなぞった。
俺は結菜ちゃんの手首を掴んだ。
「やめてくれ。真帆の妹に、こんな……」
「お義兄さん、筋肉すごい」
結菜ちゃんは俺の抵抗を意に介さず、掴まれた手とは逆の手で、俺の鎖骨の下をゆっくりと往復する。
そして、俺が振りほどこうとした瞬間、結菜ちゃんは俺の腕を引いて体勢を崩させ、そのまま正面から俺に抱きついてきた。
「きゃっ。……お義兄さん、ダメですよ、急に立とうとしたら。疲れてるくせに」
耳元で囁かれ、甘いシャンプーの匂いが再び鼻腔をくすぐる。薄いニット越しに、柔らかい感触が腕に伝わってくる。
「離れ……」
「私、お姉ちゃんに頼まれただけなのに。お義兄さん、私のこと、嫌い?」
「……そういうわけじゃ……」
「じゃあ、じっとしてて」
結菜ちゃんは俺を再びソファに押し戻すと、また背後に回った。今度は、拒絶する隙を与えないように、指が、胸の中心に向かって滑っていく。
そして、左胸の突起の上で、ピタリと止まった。
「……あれ?」
結菜ちゃんが、小首を傾げる気配がした。
「お義兄さん、ここ……」
指先が、乳首の上を「かりっ」と爪弾いた。
「ひっ……ぁっ!?」
自分でも驚くような、甲高い声が出た。
全身の血が、一気に下腹部に集まるのが分かった。
「うそ。お義兄さん、ここ、弱いんだ」
結菜ちゃんの声が、楽しそうに弾んでいる。
「ちが……っ、やめろ……!」
「なんで? すごい反応してるよ」
指先が、再び乳首を弄ぶ。今度は、指の腹で「くり、くり」と転がすように。
「あ……っ、ん……っ」
ダメだ。体が、言うことを聞かない。
疲労で弛緩しきった神経に、若い義妹の指先がもたらす刺激は、あまりにも強すぎた。
「結菜ちゃん、お願いだ、やめてくれ。俺は、真帆の……」
「知ってるよ。お姉ちゃんの旦那さんでしょ」
結菜ちゃんは、俺の背後から離れ、正面に回り込んできた。
俺はソファに座ったまま、結菜ちゃんは床に膝をついている。
見下ろされる形になった。
結菜ちゃんの目が、妖しく光っているように見えた。
「でもさ、お姉ちゃん、お義兄さんのこと、ほったらかしじゃん」
「そ、そんなことない!」
「あるよ。こんなに疲れてるのに、マッサージもしてあげない。夜も、一人ぼっち」
「……それは、仕事だから」
「仕事だから、仕方ない?」
結菜ちゃんが、俺のネクタイを掴んだ。ぐい、と顔を引き寄せられる。
「お義兄さんが我慢してること、お姉ちゃん、わかってないよ」
「…………」
「私なら、我慢させないのにな」
そう言うと、結菜ちゃんは俺のYシャツのボタンに手をかけた。
「だめだ!」
俺は、その手を振り払おうとした。
だが、結菜ちゃんは俺の手首を掴むと、そのまま自分の胸元にぐいと押し当てた。
「……っ!?」
ニット越しに伝わる、柔らかく、しかし強烈な弾力。
真帆よりも小柄な体に不釣り合いなほどの、豊かな膨らみだった。
「お義兄さんだけずるい。私だって、凝ってるかも」
結菜ちゃんが、俺の手を自分の胸に押し付けたまま、体をくねらせる。
「ん……そこ、気持ちいい……」
「やめろ、結菜ちゃん、正気に戻れ!」
「正気だよ。お義兄さんこそ、素直になれば?」
結菜ちゃんは、俺の手を解放すると、今度は俺の膝の上に、よじ登るようにして跨ってきた。
「……!」
「お義兄さん、顔、真っ赤」
至近距離。甘い香りが濃くなる。
結菜ちゃんの体が、俺の体と密着する。
俺の、すでに限界を迎えつつあった下半身に、結菜ちゃんの柔らかい部分が押し付けられた。
「ほら、お義兄さんだって、我慢できないくせに」
結菜ちゃんが、俺のベルトのバックルを弄ぶ。
「だめだ……だめだ、真帆を裏切れない……」
「裏切りなんかじゃないよ。これは、マッサージの続き。……でしょ?」
結菜ちゃんの顔が近づいてくる。
俺は、最後の抵抗として、目を固く瞑った。
だが、唇に触れたのは、柔らかい感触ではなかった。
「……ん?」
目を開けると、結菜ちゃんが、俺の胸元に顔を埋めていた。
そして、さっき俺が感じていた左胸の突起に、温かく湿ったものが触れていた。
「……あ……?」
「んちゅ……」
結菜ちゃんが、俺の乳首を、吸った。
「あ……っ、ぁ、あ!?」
衝撃、という言葉では足りなかった。
脳天をハンマーで殴られ、そのまま背骨を稲妻が駆け抜けたような、凄まじい快感。
「れろ……じゅるっ……」
小さな舌が、乳首の周りを舐め、先端を吸い上げる。
「だっ、だめ、そこ、ほんとに、だめっ……」
「ふふっ、すごい。もうガチガチ」
結菜ちゃんは顔を上げると、今度は俺の唇に、自分の唇を押し当ててきた。
抵抗する間もなく、舌がねじ込まれる。
酒も飲んでいないのに、頭がぐらぐらする。
結菜ちゃんの舌が、俺の口内を蹂躙する。
俺は、なされるがままだった。
ソファの上で、義理の妹に馬乗りになられ、乳首を吸われ、ディープキスをされている。
これが現実なのか?
疲労のせいだ。そうだ、これは悪い夢だ。
そう思おうとした瞬間、結菜ちゃんの片手が、俺のズボンのファスナーに触れた。
「お義兄さん……私、もう我慢できないかも」
その言葉が、現実への引き金だった。
俺は、真帆の妹を、抱いた。
新婚の、愛する妻の家で。
翌朝、俺は地獄の底にいた。
隣で寝息を立てていた結菜ちゃんが、アラームより早く目を覚ました。
「……おはよう、お義兄さん」
「……あ……」
俺は、何も言えなかった。
「すごかったね、昨日。お義兄さん、あんな声出すんだ」
結菜ちゃんは、何事もなかったかのように笑い、散らかった服を拾い集め始めた。
「……結菜ちゃん。俺は……」
「俺は、何?」
服を着終えた結菜ちゃんが、冷たい目で俺を見下ろした。
「真帆に……謝らないと……」
「謝る? 何を?」
「昨日、のこと……」
「ふーん」
結菜ちゃんは、鼻で笑った。
「謝って、どうするの? お姉ちゃん、喜ぶと思う?」
「……それは……」
「お義兄さんに、大好きな妹と寝たって言われて、お姉ちゃん、どう思うかな。お義兄さん、お姉ちゃんに捨てられるよ。間違いなく」
「……っ!」
「私も、お姉ちゃんに勘当される。お義兄さんのせいで、家族、めちゃくちゃだね」
「お、俺のせい……?」
「そうだよ。お義兄さんが、私を誘ったんでしょ」
「なっ……! 違う! 結菜ちゃんが……!」
「私が何? マッサージしてあげただけじゃん。そしたらお義兄さん、急にムラムラして、私に襲いかかってきた」
「そん、な……」
「私、怖かったー。お姉ちゃんの旦那さんなのに、獣みたいだった」
結菜ちゃんは、わざとらしく怯えたふりをする。
だが、その目は笑っていた。
俺は、罠に落ちたのだと悟った。
「……どう、すれは……」
「簡単だよ。これは、二人だけの秘密。ね?」
結菜ちゃんは、俺の頬を優しく撫でた。
「お義兄さんが、昨日みたいに、私のこと『可愛がって』くれるなら、私も黙ってる。お姉ちゃんのためにも、その方がいいよね?」
悪魔の囁きだった。
俺は、頷くことしかできなかった。
それから、俺の日常は崩壊した。
真帆が夜勤の日。その日は、結菜ちゃんが「家事手伝い」に来る日になった。
俺は拒否できなかった。
「お義兄さん、ただいまー。今日のご飯、何がいい?」
「……なんでも、いいよ」
「そ。じゃあ、先にお風呂、入っちゃおっか」
結菜ちゃんは、まるで自分の家のように振る舞い、俺を支配した。
リビングで、キッチンで、玄関で。
俺は結菜ちゃんの求めに応じ続けた。
「だめ。お義兄さん、全然感じてない。もっと、私に集中して」
結菜ちゃんは不満そうだった。
俺が罪悪感で死にそうな顔をしているのが、気に入らないらしかった。
「お姉ちゃんのこと考えてるでしょ。私のことだけ、考えてよ」
結菜ちゃんの要求は、エスカレートしていった。
そして、その日は来た。
真帆が、二泊三日の研修で家を空けることになった。
「ごめんね、新婚なのに。結菜には、泊まり込みで手伝ってもらうように言っといたから!」
「……え?」
「二人きりじゃ心配って言ってたけど、大丈夫でしょ? お義兄さんと結菜は、もう本当の兄妹みたいなんだから!」
電話の向こうで、真帆が屈託なく笑う。
俺は、青ざめた。
二泊三日。結菜ちゃんと、二人きり。
それは、地獄の宣告だった。
研修初日の夜。
俺は、自分の部屋(もともとは書斎にする予定だった部屋)に鍵をかけて閉じこもっていた。
「お義兄さーん、ご飯できたよー」
リビングから、結菜ちゃんの声がする。
俺は無視した。
「おーい、聞こえてるー? 入るよー?」
ガチャリ、とドアノブが回る音。
「……あれ、鍵かかってる。ひどーい。私、せっかく作ったのに」
結菜ちゃんが、ドアをドンドンと叩く。
「お義兄さん、開けてよ。開けないと、お姉ちゃんに電話しちゃうよ?」
「……っ!」
脅しだ。
「なんて言おうかなー。『お義兄さんが、部屋に閉じこもって出てこない。私が昨日、お義兄さんに無理やり襲われたって言ったら、逆上して……』」
「わかっ、わかった! 開ける! 開けるから!」
俺は慌てて鍵を開けた。
そこには、エプロン姿の結菜ちゃんが、仁王立ちで待っていた。
「遅い。ハンバーグ、冷めちゃったじゃん」
「……ごめん」
「謝るなら、こっち来て」
結菜ちゃんが、俺の手を引く。
連れて行かれたのは、リビングではなかった。
「……え? 結菜ちゃん、どこ……」
「いーから、黙ってついてきて」
引きずられるようにして連れて行かれた先は。
「……だめだ」
そこは、俺と真帆の、夫婦の寝室だった。
「ここだけは、だめだ! 絶対にだめだ!」
俺は、入り口のドア枠に必死にしがみついて抵抗した。
「なんで? お姉ちゃんの匂いがすると、興奮しない?」
「ふざけるな!」
「ふざけてないよ」
結菜ちゃんは、俺の手を強引に振りほどくと、俺をベッドの上に突き飛ばした。
ふわり、と真帆の柔軟剤の匂いが鼻を突く。
「……あ……」
真帆の匂い。俺たち夫婦の、聖域。
俺が呆然としている間に、結菜ちゃんは部屋のクローゼットを開けた。
「えーっと、どれにしようかなー」
結菜ちゃんが、ハンガーにかかった服を物色している。
「……結菜ちゃん、何……」
「ん? あ、これにしよ」
結菜ちゃんが取り出したのは、真帆のお気に入りの、シルクのネグリジェだった。
俺が、結婚一周年の前祝い(気が早いが)にプレゼントしたものだ。
「これ、お義兄さんがあげたやつでしょ。お姉ちゃん、すごい喜んでた」
結菜ちゃんはそう言うと、今着ているTシャツとショートパンツを、なんの躊躇もなく脱ぎ捨てた。
「……!」
目の前に現れた、若く、引き締まった裸体。
姉の真帆とは違う、張りのある肌。きゅっと上がった尻。
そして、真帆のレースのショーツ。
「……それ……」
「あ、これ? お姉ちゃんの借りちゃった。お義兄さん、このデザイン好きでしょ?」
結菜ちゃんは、俺の目の前で、真帆のネグリジェに袖を通した。
透けるような薄い生地が、結菜ちゃんの体のラインをくっきりと浮かび上がらせる。
「……どう? お姉ちゃんみたい?」
結菜ちゃんは、くるり、と一回転してみせた。
真帆の化粧台の前に座ると、今度は真帆の香水を手首に軽く振りかけた。
「……お姉ちゃんの匂い、するでしょ」
結菜ちゃんが、俺の隣に座った。
シルクの感触と、真帆の香水の匂い。
俺の罪悪感は、臨界点を超えようとしていた。
「お義兄さん、また顔赤い。もしかして、これで興奮した?」
結菜ちゃんが、俺の股間を、ネグリジェ越しに撫でた。
俺の体は、正直だった。
「ほら、ガチガチ。お姉ちゃんの服着てる私に、こんなんなっちゃって」
「やめろ……」
「やめない」
結菜ちゃんは、俺のズボンのベルトを外し、ファスナーを下ろした。
そして、俺の膨れ上がった熱を、外気に晒す。
「お義兄さん、すごい熱い……」
結菜ちゃんは、真帆のネグリジェを着たまま、俺の股間に顔を近づけた。
「お姉ちゃんも、いつもこうやって『お世話』してあげるの?」
「……っ!」
結菜ちゃんの、温かく湿った舌が、俺の先端を「れろり」と舐めた。
「あ……あぁっ……!」
声が、漏れる。
「声、出しちゃダメだよ。お姉ちゃんが、嫉妬しちゃう」
結菜ちゃんはくすくすと笑いながら、俺のものを、その小さな口に含んだ。
「んぐっ……じゅるっ……」
ダメだ。ダメだ。
ここは真帆のベッドだ。
結菜ちゃんが着ているのは真帆の服だ。
匂いも、真帆の匂いだ。
なのに、俺の口を犯しているのは、義妹の結菜ちゃんだ。
「んちゅ……じゅぽ……」
粘着質な水音が、寝室に響く。
真帆がいない寝室に、真帆の妹の奉仕の音が響く。
「お義兄さん、こっちも忘れてない?」
結菜ちゃんの手が、俺のYシャツのボタンを外し、胸をはだけさせた。
そして、あの日のように、俺の乳首を指先で摘んだ。
「あぎっ……!」
「口と、こっち。どっちが気持ちいい?」
結菜ちゃんは、フェラチオを続けながら、容赦なく俺の乳首を「くりくり」と責め立てる。
「んぐっ……ああっ! ああっ!」
口を塞がれているのに、快感で声が漏れる。
脳が、二方向からの快感で処理しきれなくなる。
「お姉ちゃんの匂いに包まれて、お姉ちゃんの妹にしゃぶられてる……お義兄さん、今、最高に『変態』だよ」
「あ……ぁ……もう……」
俺は、射精しそうになった。
その瞬間、ピタリ、と結菜ちゃんの口の動きが止まった。
「……あ?」
「ダメ。まだイっちゃダメ」
結菜ちゃんが、俺の睾丸をきゅっと握る。
「ひっ……!」
快感の波が、強制的に引KOBEされていく。
「お義兄さん、早すぎ。お姉ちゃん、こんなんじゃ満足しないでしょ」
結菜ちゃんは、口を離すと、今度は俺の乳首責めだけに集中し始めた。
「あ、やめ……そこは……」
「やめない。こっちでイってごらんよ」
爪先で、かりかりと乳首を引っ掻かれる。
指の腹で、ぐりぐりと押し潰される。
「あひっ……ああっ……だめ、だめだっ……!」
「ほら、イきそう。射精しないのに、イきそうになってる」
「あ……あ……あぁぁぁっ!」
脳が、真っ白になった。
射精は、していない。なのに、全身が痙攣し、意識が飛んだ。
「……ふぅ……」
「……イった……」
結菜ちゃんが、満足そうに笑っている。
「ほら、イっちゃった。射精してないのにイっちゃった。お義兄さん、乳首だけでイける体になっちゃったね」
屈辱だった。
男としての何かが、根本から破壊された気がした。
俺は、涙目になっていた。
「……もう、やめてくれ……お願いします……」
「やだ」
結菜ちゃんは、即答した。
「お姉ちゃんが帰ってくるまで、あと二日もあるんだよ? もっと、ぐちゃぐちゃにしてあげる」
「……あ……」
「お義兄さん、乳首だけが弱いと思ってるでしょ? 全然違うよ」
結菜ちゃんは、俺の耳元に唇を寄せた。
「ここも、好きでしょ?」
そう言って、俺の耳たぶを、軽く歯で噛んだ。
「あっ……!?」
乳首とは違う、ぞわりとした快感が背筋を走る。
「ふふっ、ビクッとした。じゃあ、こっちは?」
結菜ちゃんの手が、俺の内腿をゆっくりと撫で上げる。
「や、やめ……そこは……」
「ここを、こうやって……爪立てると?」
爪が、太ももの内側の柔らかい皮膚を「かり」と引っ掻いた。
「んんっ……!?」
下半身が勝手に跳ねる。
「ほら、やっぱり。お義兄さん、隠してることが多すぎ」
結菜ちゃんは、俺が反応した場所を執拗に攻め始めた。
耳を舐められながら、内腿を撫でられ、同時に乳首を指で転がされる。
「あ……だめ……おかしくなる……」
「お姉ちゃんのことなんか思い出せないくらい、私の快感で上書きしてあげる」
結菜ちゃんは、再び俺の股間に顔を埋めた。
「次は、寸止めしないであげる。そのかわり、私の言うこと、聞いてくれる?」
「……なん、だ……?」
「イくとき、『真帆より、結菜ちゃんがイイ』って言って」
「……な……! そんなこと、言えるわけ……!」
「じゃあ、おあずけ」
結菜ちゃんは、また乳首を摘んできた。
「あぎぃぃっ! わかっ、わかった! 言う! 言うから!」
「ふふっ。素直でよろしい」
結菜ちゃんの、地獄の奉仕が再開された。
「じゅるるるっ! ぐちゅっ! んちゅっ!」
さっきよりも激しく、貪欲に、俺のものが吸われていく。
乳首も、同時に責められ続ける。
「ああっ! ああっ! もう、だめ、イくっ!」
「はい、言って?」
「ま、真帆より……っ」
「ん?」
「真帆より……結菜ちゃんが……イイです……っ!」
言った。
俺は、愛する妻を裏切る言葉を、その妹の前で叫んでしまった。
「……あぁぁぁぁぁっ!」
俺は、真帆のネグリジェを着た結菜ちゃんの口の中に、すべてを放出した。
その二泊三日は、文字通りの地獄だった。
俺は、結菜ちゃんに「開発」され尽くした。
夫婦の寝室で、リビングで、キッチンで、あろうことか、真帆が大切にしているベランダの家庭菜園の前で。
俺は、何度もメスイキさせられ、何度も寸止めされ、快楽で精神が壊れる寸前まで追い込まれた。
結菜ちゃんは、俺が搾り出せる最後の一滴まで、容赦なく搾り取っていった。
研修から、真帆が帰ってきた。
「ただいまー! あー、疲れた! 寂しかった?」
「……あ、ああ。おかえり、真帆」
俺は、妻の顔をまともに見れなかった。
「あれ? 結菜は?」
「さっき、帰ったよ。学校があるからって」
「そっかー。結菜にちゃんとお礼言っとかないと。……あれ、どうしたの? なんか、ぐったりしてる」
「……いや、ちょっと、寝不足で……」
「もう、無理しちゃダメだよ? 私がいない間、ちゃんと休まないと」
真帆が屈託なく笑う。
「結菜、ちゃんとご飯作ってくれた? あの子、張り切りすぎるところあるから、お義兄さん疲れさせなかった?」
「……あ、ああ。ちゃんと、作ってくれたよ……」
真帆の優しさが、ナイフのように俺の胸に突き刺さる。
俺の体には、結菜ちゃんにつけられた、無数のキスマークが残っていた。服で隠れる場所ばかりを、狙って。
俺の乳首は、赤く腫れ上がり、下着が擦れるだけで疼いた。
日常が、戻ってきた。
いや、戻ってきたように見えただけだ。
真帆が夜勤の日。
「今日、夜勤なんだ。結菜に行ってもらうね」
真帆が電話でそう告げる。
その言葉は、以前とはまったく違う意味を持って俺の耳に響いた。
それは、地獄の合図。
いや、快楽の合図だ。
俺の体は、結菜ちゃんを求めるように調教されてしまった。
真帆への罪悪感に苛まれながらも、心のどこかで、あの背徳的な快感を待っている自分がいる。
今日も、真帆が夜勤だ。
俺はリビングのソファで、静かにその時を待っている。
真帆を愛している。それは、本当だ。
だが、俺は、あの夜から、義妹・結菜ちゃんの「奴隷」になった。
カチャリ、と玄関の鍵が開く音がした。
「ただいま、お義兄さん」
真帆への罪悪感が強ければ強いほど、結菜に与えられる快感が鋭くなることを、俺はもう知ってしまっていた。
俺の、地獄のような幸福の夜が、また始まる。