今日プロポーズするはずだった俺が、満員電車で出会った美女に骨の髄まで搾り取られて人生を捨てるまで
満員電車で偶然背後に立った美女からの誘惑。 それは、真面目だった俺を快楽の奴隷へと変える悪魔の囁きだった。
(くそっ……こんな時に人身事故だなんて……!)
駅のホームに溢れかえる人の波を見つめながら、俺、相沢健司は奥歯を噛み締めていた。
手元のスマートフォンに表示された時刻は、待ち合わせ時間を既に十五分も過ぎている。 今日は大切な日だった。 大学時代から五年付き合ってきた恋人、由美との記念日。 奮発して予約したレストランで、プロポーズをするつもりだったのだ。
『ごめん、事故で電車が止まってて……少し遅れる』
既読のつかないメッセージ画面を睨んでも、状況は変わらない。 アナウンスと共に、満員という言葉すら生温いほどに寿司詰めになった車両が滑り込んでくる。
(これに乗らなきゃ、間に合わない……)
悲壮な決意で、肉の壁へと体をねじ込む。 四方八方から圧し掛かる他人の体温と、湿った衣服の不快な感触。 澱んだ空気には汗と整髪料、そして誰かの香水が混じり合った独特の臭気が充満している。
ドアが閉まる際、背骨が軋むほどの圧力がかかり、俺は思わず呻き声を上げた。
「うぐっ……」
身動き一つ取れない。 吊革を掴むことすらできず、ただ周囲の圧力によって直立姿勢を保たされているだけの状態。 視界の端に見える窓ガラスは、外気との温度差で白く曇り、まるでこの蒸し風呂のような空間を外界から隔絶する結界のようだった。
(最悪だ……)
額を伝う汗を拭うこともできないまま、俺は目を閉じて痛みに耐える。 その時だった。 背中に、奇妙な感触があったのは。
(なんだ……?)
ぐにゅり、と。 柔らかく、弾力のある二つの膨らみが、俺の背中に押し付けられていた。
最初は単なる混雑のせいだと思った。 だが、電車の揺れに合わせて、その柔らかいものは俺の背中を上下左右に、まるで撫で回すかのように這い回る。 薄手のシャツ越しに伝わる、体温と、ブラジャーのワイヤーの硬さ、そして豊かな果実の質量。
(ちょ……なんだよ、これ……)
意図的だ。 直感がそう告げていた。 避けようにも、前後左右を屈強なサラリーマンの壁に阻まれ、数ミリたりとも動くことができない。
すると、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐった。 汗臭い車内には不釣り合いな、濃厚で艶やかなダマスクローズの香り。 その香りが濃くなったかと思うと、
「大変ですねぇ……♥」
耳元で、熱い吐息と共に甘美な声が囁かれた。
「っ……!?」
びくり、と肩が跳ねる。 すぐ後ろに、女がいる。 それも、俺の耳朶を唇で食むことができるほどの至近距離に。
「こんなにぎゅうぎゅうで……かわいそうに♥」
囁くたびに、湿った舌先がちろちろと耳の輪郭をなぞる。 背筋を冷たいものが駆け上がり、同時に下腹部に熱いものが灯る。
「や、やめてくれ……」
周囲に聞こえないよう、必死に声を殺して抗議する。 だが、女は聞き入れるどころか、くすりと楽しげに笑った気配がした。
「ふふ。やめて?何をですかぁ?♥私はただ、揺れに身を任せているだけですよぉ?」
言いながら、女はさらに体を密着させてくる。 背中全体に、柔らかな女体のラインがくっきりと浮かび上がるほどに。 そして、脇の下からにするりと細い腕が伸びてきた。
「なっ……!」
制止する間もなく、その手は俺の胸元へと這い上がってくる。
「心臓、すごい音……♥ドキドキいってるぅ♥」
「さ、触るな……!」
「そんな大きな声出しちゃダメですよぉ♥周りの人に、痴漢だって勘違いされちゃいますよぉ?」
「っ……!」
卑怯な脅しに、言葉を詰まらせる。 その隙を逃さず、女の指先がYシャツの上から左の乳首を捉えた。
「んっ……」
カリッ、と爪先で突起を引っ掻かれる。 微かな痛みと、それを上回る鋭い快感に、思わず喉から声が漏れた。
「あらぁ♥ここ、敏感なんですかぁ?♥」
「ち、違うっ……」
「嘘つき♥シャツの上からでも、ぷっくり膨らんでるのが分かりますよぉ♥」
女の指は執拗だった。 人差し指と親指で乳首を摘まみ、くりくりと回し、時には爪を立ててギリギリと捻り上げる。
「うぐぅっ……♥」
満員電車の密室。 周囲には無数の人間がいる。 誰もがスマホを見たり、死んだような目で虚空を見つめたりしている中で、俺だけが背後の見知らぬ女に乳首を開発されている。 その背徳感が、屈辱と共に異常な興奮を呼び覚ます。
「汗、すごぉい♥興奮してきちゃったんですかぁ?♥」
「ふざけ……るな……俺は、これから彼女と……」
「彼女?あら、デートですかぁ?♥」
女の手が、もう片方の乳首へと移動する。 今度は掌全体で胸板を撫で回し、ゆっくりと円を描きながら中心へと迫っていく。
「いいですねぇ、純愛♥でもぉ……体は正直ですよぉ?♥」
「ひあっ……♥」
不意を突いて、乳首を強くつねられた。 脳天に突き抜けるような痺れ。 膝から力が抜けそうになるのを、必死に吊革を掴む手に力を込めて耐える。
「彼女のこと考えてるのにぃ、こんなに硬くなっちゃってぇ♥悪い子ですねぇ♥」
「ちが……これは、痛いから……」
「痛い?ふふ、強がりさん♥じゃあ、こうしてあげましょうかぁ♥」
するり、と。 女の手が、シャツのボタンの隙間から内側へと侵入してきた。
「!? やめろっ……!」
「しーっ♥静かにしないと、バレちゃいますよぉ♥」
ひんやりとした細い指が、汗ばんだ肌に直接触れる。 その冷たさに肌が粟立つ。 指先は迷うことなく乳首へと吸い寄せられ、直接その突起を弄り始めた。
「あぁっ……♥」
布越しの刺激とは比べ物にならない。 指紋の凹凸が敏感な粘膜を擦り、爪先が優しく、時に激しく刺激を与える。
「すごい、コリコリ♥さっきよりもっと大きくなってるぅ♥」
「だ、だめだっ……やめ……♥」
「やめないで?ふふ、もっと欲しいんですねぇ♥」
女の巧みな指使いは、俺の思考回路を焼き切ろうとしていた。 乳首を摘まんで引っ張り、弾き、爪で円を描くようにカリカリと刺激する。 そのたびに、俺の口からは抑えきれない吐息が漏れる。
「由美……っ……」
彼女の名前を呼んで、理性を繋ぎ止めようとする。 だが、その名前を呼ぶ声すらも、情欲に濡れて震えていた。
「由美さんっていうんですかぁ?♥いい名前ぇ♥でも、由美さんはこんなことしてくれませんよねぇ?♥」
図星だった。 由美は清純で、セックスの時でさえ、こんな風に俺を一方的に責めるようなことはしない。 こんな、嬲るような、俺の理性を崩壊させるような淫らな指使いなんて、知らないはずだ。
「男の人ってぇ、乳首責められると弱いんですよねぇ♥」
「うぐぅっ……あっ♥あぁっ♥」
「ほら、また可愛い声出したぁ♥」
女は楽しんでいた。 俺が必死に耐えようとする様を。 そして、耐えきれずに快楽に屈していく様を。
背中に押し付けられた胸の感触も、より一層強くなる。 柔らかい肉が背骨に食い込み、時折、硬い突起がこすれる感触までもが伝わってくる。
(まさか、この女……ノーブラなのか……?)
そんな淫らな想像が頭をよぎった瞬間、下半身が一気に熱く膨れ上がった。
「あは♥」
女が小さな笑い声を漏らす。 俺のズボンの尻ポケットあたりに、何かが当たっていた。 それは女の下腹部。 そして、太腿。
「おちんちん、すごいことになってますよぉ♥」
「っ……!?」
女の手が、シャツの中から抜かれ、ゆっくりと下へと降りていく。 ベルトのバックルをなぞり、スラックスのファスナーのあたりを指先でツツッとなぞる。
「やめ……そこは……!」
「カチカチじゃないですかぁ♥彼女に会う前に、こんなに勃たせてぇ♥変態さんですねぇ♥」
「ちがうっ……お前が……!」
「私のせいにするんですかぁ?ひどぉい♥私はただ、困ってる人を慰めてあげてるだけなのにぃ♥」
女の手が、ズボンの上から膨れ上がった肉棒を鷲掴みにした。
「うおっ……!?」
「熱ぅい♥すごい熱気♥」
ズボンという分厚い布越しでも、女の手の熱さと柔らかさが伝わってくる。 女は躊躇なく、その剛直を揉みしだき始めた。 根本から先端へ、そしてまた根本へ。 手のひらで転がし、指先で亀頭のカリの形を確かめるように執拗になぞる。
「んぐっ……ぅぅぅ……!」
声が出るのを防ぐために、自分の腕を噛む。 だが、快感は容赦なく脳髄を揺さぶる。 電車の揺れに合わせて、女は自身の下腹部を俺の尻に押し付け、グリグリと擦り付けてくる。
「あっ♥んっ♥」
女の口からも、艶めかしい吐息が漏れる。 それが演技なのか本気なのか、混乱した頭では判断がつかない。 ただ分かるのは、俺の体が完全にこの女の支配下に置かれているという事実だけ。
「ねぇ……もっと気持ちよくなりたくないですかぁ?♥」
耳元で、悪魔の囁き。
「ここ……開けちゃいましょうかぁ♥」
カチャリ。 金属音が、喧騒にかき消されることなく、俺の耳には雷鳴のように響いた。 ベルトが緩められ、ファスナーが下ろされる音。
「まっ、待てっ……ここは電車っ……!」
「大丈夫ですよぉ♥みんな自分のことに夢中ですからぁ♥」
するりと、女の手が下着の中に侵入した。
「ひいぃっ……♥」
直接触れられた瞬間、腰が大きく跳ねた。
「すごぉい♥ビクビクしてるぅ♥」
女の手は冷たかったはずなのに、今は熱を帯びて、俺の分身に絡みついてくる。 滑らかな掌が、亀頭の先端から溢れ出る先走りの液を塗り広げ、竿全体をヌルヌルにしていく。
「ああっ♥や、やめっ……♥こんなとこで……♥」
「由美さんには内緒ですよぉ♥」
その名前を出されるたびに、罪悪感が薪となって興奮の炎を燃え上がらせる。 女は、俺のモノをまるで宝物でも扱うかのように、丁寧に、慈しむように扱き始めた。 親指で鈴口を擦り、人差し指と中指で裏筋を挟んで上下させる。
「んっ……んんっ……♥」
「気持ちいいですかぁ?♥」
「ぐっ……ちがっ……気持ちよくなんかっ……♥」
「強がりさん♥先っぽ、こんなに濡れてるのにぃ♥」
じゅちゅ、と卑猥な水音が鳴る。 周囲の雑踏にかき消されているとはいえ、俺の耳にはその音がはっきりと聞こえていた。
隣に立っているサラリーマンの肩が、俺の肩と触れ合う。 それほどの密着状態の中で、俺は見知らぬ女に手淫されている。 その異常な状況が、理性のタガを次々と外していく。
「ねぇ……彼女とデートなんでしょう?♥」
女が手を動かしながら、囁く。
「こんなに元気になっちゃってぇ……このまま行ったら、彼女びっくりしちゃいますよぉ♥」
「うっ……くぅっ……♥」
「だからぁ、私が処理してあげますねぇ♥」
「だ、だめだっ……出すなっ……今日は……♥」
そう、今日は大切な日なのだ。 プロポーズの日。 心身ともに万全の状態で、由美に向き合いたかった。 こんな、どこの誰とも知れない女に、欲望のままに精を吐き出すなんて、あってはならない。
「あらぁ……まだ抵抗するんですかぁ?♥」
女の声色が、少しだけ低くなる。 サディスティックな響きを帯びて。
「いいですよぉ♥じゃあ……ギリギリまで焦らしてあげますねぇ♥」
女の手の動きが変わった。 先端を掌で押しつぶすように刺激し、根本を強く握りしめる。 射精の衝動を無理やり押し込められ、出口を塞がれた快感が体の中を逆流する。
「あぐっ……!? や、やめ……壊れっ……!」
「壊れちゃえばいいんですよぉ♥そんな理性の壁なんてぇ♥」
さらに、女のもう片方の手が、再びシャツの中へ。 今度は両方の乳首を同時に、爪を立てて激しく抓り上げた。
「ぎいぃぃっ……!!」
上と下からの同時攻撃。 激痛に近い快感が、視界を白く染める。
「ほらほら、我慢してぇ♥出したいんでしょう?♥」
「だ、だしたい……いや、だめだっ……だしたくないっ……♥」
「どっちなんですかぁ?♥ふふ、おちんちんは正直ですよぉ♥こんなにビクビクしてぇ♥」
女の手の中で、俺の分身は意思を持った生き物のように跳ね回っていた。 もう、限界だった。 何もかも忘れて、この快楽に身を委ねてしまいたい。 そんな誘惑が、頭の大部分を占め始めていた時。
ブー、ブー、ブー。
ポケットの中で、スマホが振動した。 着信画面には『由美』の文字。
「あっ……!」
現実に引き戻される。 由美だ。心配して電話をかけてくれたんだ。
「あらぁ……タイミング悪いですねぇ♥」
女が画面を覗き込み、くすりと笑う。
「出ないんですかぁ?♥」
「で、でる……離してくれ……っ」
「ダメですぅ♥」
女は握る力を強めた。
「このまま出てくださいよぉ♥」
「なっ……!?」
「彼女の声を聞きながらぁ、おちんちん扱かれるの……興奮しますよぉ?♥」
「きちく……っ……!」
「ほら、早くしないと切れちゃいますよぉ♥」
脅されるようにして、震える手で通話ボタンを押す。
「……も、もしもし……」
『あっ、健司?よかった、やっと繋がった!今どこ?大丈夫?』
由美の明るく、心配そうな声。 その声を聞いた瞬間、胸が締め付けられるような罪悪感に襲われる。 だが、それと同時に、下半身を襲う快感が倍増した。
彼女と話しているのに、俺は今、別の女に快楽を与えられている。 その背徳感が、脳髄を焼き尽くす。
「あぁ……ごめん……今、電車で……うっ……!」
女が、亀頭の先端を爪でカリリと引っ掻いた。
「っ!?……うぐっ……」
『え?どうしたの?苦しいの?』
「い、いや……人が多くて……圧迫されて……ふぅっ……」
『そっか……大変だね。無理しないでね?私、ずっと待ってるから』
「うん……由美……ごめ……あっ……♥」
女が、ズボンの中に顔を寄せた気配がした。 まさか。
「ちゅっ♥」
「ひぁっ!?」
『健司?変な声……』
「な、なんでもないっ!……ちょっと、押されて……」
女が、あろうことかズボンの上から、俺のモノにキスをしたのだ。 湿った唇の感触と、熱い吐息が、布越しに伝わってくる。 そして、耳元で囁く。
「彼女、待ってるってぇ♥健気ですねぇ♥」
女の手が、激しく動き始める。
「でもぉ、健司さんの体はぁ、もう私の虜ですよぉ♥」
「んぐぐっ……!!」
『健司?もしもし?』
「ごめん……あとで、かけ直す……!」
通話を切る。 これ以上、彼女の声を聞きながら耐えることは不可能だった。 スマホを握りしめたまま、俺は荒い息を吐く。
「あーあ、切っちゃったぁ♥冷たいですねぇ♥」
女は楽しげに笑いながら、攻め手を緩めない。
「でもぉ、これで集中できますねぇ♥」
「もう……許してくれ……」
「許す?何をですかぁ?♥こんなに気持ちよさそうな顔してぇ♥」
女の手が、ガシガシと激しく上下動を繰り返す。 寸止めと刺激の波状攻撃。 俺の理性は、もう風前の灯火だった。
「ねぇ……次の駅で降りましょうかぁ♥」
悪魔の提案。
「えっ……」
「このままじゃあ、満足できないでしょう?♥続き……したくないですかぁ?♥」
「続き……」
「そう♥もっと静かなところでぇ、服も脱いでぇ……たっぷりと可愛がってあげますよぉ♥」
「だめだ……俺は、行かなきゃ……」
「本当に行けるんですかぁ?♥こんな状態でぇ♥」
女が、下着の中に手を滑り込ませ、睾丸を優しく揉みしだいた。
「うひぃっ……♥」
「パンツ、もうぐしょぐしょですよぉ♥このまま彼女に会うんですかぁ?♥」
「っ……」
「私ならぁ、全部綺麗にしてあげますよぉ♥お口でぇ、ジュルジュルって吸い出してぇ……♥」
想像してしまった。 この女の唇が、俺のモノを直接咥え込み、舌を絡ませ、精を啜り尽くす光景を。 その瞬間、頭の中で何かが切れた音がした。
プシュー。
電車のドアが開く音がする。 いつの間にか、乗り換えのターミナル駅に着いていたらしい。 吐き出される人の波。 背中の女が、俺の手を引いた。
「行きましょう♥……健司さん♥」
初めて名前を呼ばれた。 その声の甘美な響きに、俺の足は自然と動いていた。 由美の待つレストランとは、反対方向へ。
ホームに降り立った俺の手を、女―――濡れたような黒髪に、深紅のルージュを引いた妖艶な美女―――が、しっかりと握りしめる。
「いい子ですねぇ♥」
彼女は、獲物を手に入れた捕食者のような、それでいて聖母のような慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。 ポケットの中で、再びスマホが振動していた。 この手を振りほどけば、まだ間に合うかもしれない。頭の片隅で警鐘が鳴り響く。
だが、美玲の手のひらから伝わる熱と、鼻腔をくすぐるダマスクローズの香りが、俺の思考を麻痺させていた。 その熱に誘われるまま、俺はスマホをポケットの奥へと押し込んだ。
「さぁ、天国へ案内してあげますよぉ……たっぷりと、骨の髄まで溶かしてあげますからねぇ♥」
俺は、震える足で彼女の後を追う。 ただ、目の前の女が約束してくれた、底なしの快楽地獄へと、自ら堕ちていったのだ。
雑踏を抜け、彼女に引かれるままに辿り着いたのは、路地裏にひっそりと佇む古城のような外観のホテルだった。 自動ドアが開き、冷房の効いたロビーへと足を踏み入れると、甘ったるいアロマの香りが鼻孔を満たす。
「さぁ、どうぞ♥」
慣れた手つきでパネルを操作し、一番高い部屋を選ぶ彼女。 エレベーターに乗り込み、密室になった途端、彼女は再び俺の体に絡みついてきた。
「待ちきれませんねぇ♥健司さんの体、また熱くなってきてますよぉ♥」
「うっ……」
彼女の豊満な胸が腕に押し付けられ、柔らかな弾力が理性を削り取っていく。 部屋に入り、重厚な扉が閉まる音が、まるで檻の錠が下ろされた音のように響いた。 外界から完全に隔絶された空間。 広々とした室内には、真紅のシーツが敷かれたキングサイズのベッドが鎮座している。
「素敵なお部屋でしょう?♥ここなら誰にも邪魔されませんよぉ♥」
彼女はパンプスを脱ぎ捨てると、くるりと振り返り、俺のネクタイに指をかけた。
「さぁ……脱ぎましょうかぁ♥汗でぐしょぐしょですよぉ♥」
「あ……ああ……」
抵抗する気力は、駅のホームに置いてきてしまったらしい。 されるがままにネクタイを緩められ、シャツのボタンを一つずつ外されていく。 ボタンが外れるたび、彼女の指先が肌に触れ、電気のような痺れが走る。
「ふふ、乳首……まだ立ってますねぇ♥電車の中であんなにイジメたのにぃ♥」
露出した胸板を見て、彼女がくすりと笑う。 確かに、俺の乳首は未だに充血し、ぷっくりと膨れ上がったままだった。
シャツが床に落ち、ベルトが外され、ズボンと下着が同時に下ろされる。 冷気と共に、剥き出しになった羞恥心が俺を襲う。 だが、それ以上に俺を支配していたのは、目の前の女への渇望だった。
彼女もまた、ゆっくりと衣服を脱ぎ捨てていく。 ブラウス、タイトスカート、ストッキング。 現れたのは、電車の中で俺を狂わせた、あの豊満で美しい肢体だった。 白磁のような肌、くびれたウエスト、そして豊かな双丘。 黒いレースの下着だけを纏ったその姿は、あまりにも艶めかしく、神々しいほどだった。
「見惚れちゃってぇ♥可愛いですねぇ♥」
彼女は俺の手を取り、ベッドへと導く。
「まずは……綺麗にしましょうかぁ♥シャワー、浴びましょうねぇ♥」
ガラス張りのバスルーム。 ミストサウナのような蒸気の中で、俺は彼女に椅子に座らされていた。
「じっとしててくださいねぇ♥私が全部、洗ってあげますからぁ♥」
彼女はボディスポンジにたっぷりと泡を立てると、それを俺の体に滑らせるのではなく、自らの体に塗りたくった。 そして、泡だらけになったその豊満な胸を、俺の背中に押し付けてきたのだ。
「んっ……♥」
「あぁっ……!?」
「どうですかぁ?♥おっぱい洗い……気持ちいいでしょう?♥」
背中に感じる、ぬるぬるとした泡の感触と、柔らかい肉の圧力。 彼女は俺の背後から抱きつくようにして、胸を押し付け、円を描くように擦り付けてくる。
「う、うぅっ……やばいっ……♥」
「やばい?何がですかぁ?♥」
彼女の手が、泡に塗れた腹部を撫で下ろし、股間へと伸びる。
「ここも……綺麗にしないとねぇ♥」
「ひぁっ……!」
泡のついた手が、敏感になりきった亀頭を包み込む。 ぬちゃ、ぬちゃ、と湿った音が浴室に反響する。
「あは♥また大きくなっちゃったぁ♥由美さんのこと、忘れちゃいましたかぁ?♥」
「っ……! い、いまは……その名前……」
「だめですよぉ♥ちゃんと覚えておかないとぉ♥彼女、今頃ひとりで……健司さんのこと、待ってるんですからぁ♥」
彼女は残酷だった。 快楽の波間に、わざと罪悪感という棘を混ぜ込んでくる。 だが、その棘が刺さるたびに、俺の興奮は底なしに深まっていくのだ。 彼女は俺の耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共に囁く。
「かわいそうな由美さん……♥彼氏がこんな痴女に、おちんちん洗われて喜んでるなんてぇ……知ったら泣いちゃいますねぇ♥」
「ぐぅっ……! やめ……ろ……♥」
「やめませんよぉ♥だって、健司さんのおちんちん、こんなに喜んでるじゃないですかぁ♥ビクビクしてぇ、我慢汁まで垂らしてぇ♥」
彼女の指が、鈴口から溢れる透明な液をすくい取り、それを俺の乳首に塗りつけた。
「ひいぃっ……!?」
「自分の汁の味……知ってますかぁ?♥」
「な、なにを……っ!?」
彼女は俺の前に回り込むと、屈み込み、その我慢汁と泡に塗れた乳首を、パクりと口に含んだ。
「あああああっ……!!」
暖かい口腔内の感触。 ざらりとした舌の感触。 そして、強く吸い上げられる吸引力。
「ぢゅっ……じゅるるっ……ちゅぽっ……♥」
いやらしい水音が、脳髄を直接揺らす。
「んむっ……んちゅ……♥んぁ、しょっぱい♥」
彼女は乳首を口から離すと、銀色の糸を引かせながら妖艶に微笑んだ。
「健司さんの味……おいしいですぅ♥」
その一言で、俺の理性は音を立てて崩れ落ちそうになった。
「さぁ……綺麗になったからぁ、ベッドに行きましょうかぁ♥」
彼女はシャワーで手早く泡を洗い流すと、バスタオルで俺の体を拭き、まるで赤子をあやすように優しく、しかし有無を言わせぬ力強さでベッドへと連れて行った。
「仰向けになってくださいねぇ♥」
言われるがままに、真紅のシーツの上に身を横たえる。 天井の照明は落とされ、間接照明の薄暗い灯りだけが、彼女の白い肌をぼんやりと照らし出している。
彼女はベッドサイドの引き出しを開け、何かを取り出した。 それは、ピンク色のローションが入ったボトルだった。
「たっぷりと……とろとろにしてあげますねぇ♥」
彼女はボトルを逆さにし、冷たい液体を俺の胸元に垂らした。 とぷん、とぷん。 粘度のある液体が、肌の上をゆっくりと滑り落ちていく。
「ひゃっ……つめた……」
「ふふ、すぐに熱くなりますよぉ♥」
彼女は自分の手のひらにもローションを広げると、俺の上に跨った。 その瞬間、彼女の秘部が、俺の腹部に押し当てられる。
「んあっ……♥」
下着越しではない。 直接、彼女の濡れた秘肉が、俺の肌に触れているのだ。
「あ……あたってる……っ……」
「分かりますかぁ?♥私のおまんこも……もう、ぐしょぐしょなんですよぉ♥」
彼女は腰をくねらせ、ぬるぬるとしたローションを潤滑油にして、秘部を俺の腹、そして胸へと擦り上げてくる。
「あぁっ……すごい……ぬるぬる……♥」
「健司さんのおちんちんとおんなじ♥汁だらけぇ♥」
彼女はそのまま体を前傾させ、豊満な乳房を俺の顔の前にぶら下げた。 先端の突起は、興奮で赤く充血し、固く尖っている。
「舐めたいですかぁ?♥」
「な、なめ……」
「素直じゃないですねぇ♥舐めたいなら、お願いしないとぉ♥」
「お……おねがいします……舐めさせて……」
プライドも何もない。 ただ、目の前の果実を味わいたいという本能だけが俺を動かしていた。
「いい子ですねぇ♥」
彼女は少しだけ体を沈め、乳首を俺の唇に押し付けた。 俺は貪るように食いつく。 舌で転がし、唇で挟み、甘噛みする。
「んっ……ぁんっ……♥激しい……♥」
彼女の甘い喘ぎ声が、さらに俺を煽る。 口の中で硬くなる乳首の感触に陶酔しながら、俺の手は自然と彼女の腰に伸び、その肉感的な感触を楽しんでいた。
だが、彼女はそれを許さなかった。
「だめっ♥手は使っちゃだめですよぉ♥」
彼女は俺の手首を掴み、頭の上へと押し上げた。
「抵抗できないように……♥」
どこから取り出したのか、絹の紐のようなもので、俺の両手首をベッドのヘッドボードに縛り付けたのだ。
「なっ……!?」
「これでぇ、健司さんはもう、まな板の上の鯉ですねぇ♥」
彼女は悪戯っぽく笑い、俺の体を見下ろす。 無防備に晒された喉元、胸、そして天を突くように勃起したペニス。
「さぁて……どこから食べてあげましょうかぁ♥」
彼女の指が、ローションで光る俺の胸板を這う。 そして、再び乳首へ。
「やっぱりぃ、ここがお気に入りみたいですねぇ♥」
「ひぁっ……! そこっ……!」
「電車の中よりもぉ、もっと激しくしてあげますよぉ♥」
彼女は両手でそれぞれの乳首を摘まむと、こねるように、潰すように揉みしだき始めた。
「あぐぅっ! あぁっ! あぁぁっ……!」
「声、我慢しなくていいですよぉ♥ここでは誰も聞いてませんからぁ♥由美さんもねぇ♥」
また、由美の名前。
「うぅっ……ゆ、ゆみ……っ……!」
「由美さんに悪いことしてるって、思ってますかぁ?♥」
ぐりっ、と爪を立てられる。
「あぎぃっ! おもっ、思ってるっ……!」
「でもぉ、おちんちんはこんなに元気♥由美さんよりぃ、私の指の方がいいって言ってますよぉ♥」
「ちが……ちがうっ……!」
「違くないですぅ♥だって、見てくださいよぉ♥」
彼女は片手を離し、俺のペニスを握った。
「乳首いじられただけでぇ、こんなに先走り出してぇ♥」
にちゃ、にちゃ、と音を立てて扱く。
「ほら、びくんびくんしてるぅ♥」
「あぁっ、だめっ、そこっ……同時にっ……!」
「同時がいいんですかぁ?♥欲張りさんですねぇ♥」
上では乳首をギリギリと捻り上げられ、下ではペニスをネットリと扱かれる。 快楽の挟み撃ちに、俺の腰は勝手に跳ね上がり、シーツを掻きむしりたくても両手は拘束されている。 ただ、身をよじって喘ぐことしかできない。
「いっちゃう……! 出るっ! 出るぅっ……!」
「だめですぅ♥まだ許しませんよぉ♥」
射精の波が押し寄せた瞬間、彼女の手がペニスの根元をきつく締め上げた。
「ぐっ……!? ぎぃぃぃっ……!!」
出口を塞がれた快感が、行き場を失って体中を暴れ回る。 苦しいほどの快感に、目の前がチカチカと明滅した。
「はぁっ……はぁっ……! し、死ぬっ……!」
「死にませんよぉ♥これくらいで死んでたらぁ、これから持ちませんからぁ♥」
彼女はにっこりと微笑むと、手を放した。 寸止めされたペニスは、ドクドクと脈打ちながら、さらに硬度を増している。
「苦しいですかぁ?♥出したいですかぁ?♥」
「だ、だしたい……おねがい……ださせて……」
「だめ♥」
彼女は即答した。
「健司さんにはぁ、まだ足りないものがありますからぁ♥」
「たり、ない……?」
「そう♥……覚悟、ですよぉ♥」
彼女はベッドサイドのテーブルから、俺のスマホを取り上げた。 画面には、由美からの未読メッセージが十件以上溜まっている。
『心配だよ、連絡して』 『レストラン、時間変更してもらったから』 『何かあったの?』
彼女はその画面を、俺の目の前にかざした。
「見てください♥健気ですねぇ♥」
「やめ……見せ……ないで……」
「由美さん、まだ待ってるんですよぉ♥健司さんがプロポーズしてくれるのを信じてぇ♥」
彼女はスマホを放り投げると、再び俺の上に跨った。 今度は、顔の方を向いて。
「ねぇ……健司さん♥」
彼女の顔が近づいてくる。 美しい瞳が、俺の心の奥底を見透かすように覗き込んでくる。
「私とぉ、由美さん……どっちが気持ちいいですかぁ?♥」
「そ、それは……」
「答えてください♥」
彼女の手が、俺の睾丸を優しく、しかし確実に支配するように掴んだ。
「っ……!」
「答えないとぉ……潰しちゃいますよぉ?♥」
「ま、まって……!」
「どっちですかぁ?♥乳首いじられてぇ、おちんちん扱かれてぇ……こんなに感じさせてくれるのはぁ、どっちですかぁ?♥」
「あ……あなた……です……」
「名前で呼んでください♥……美玲(みれい)って言いますぅ♥」
「み、みれい……さん……」
「よくできましたぁ♥」
美玲は満足げに微笑むと、ご褒美とばかりに俺の唇にキスをした。 濃厚で、唾液たっぷりのキス。 舌が絡み合い、俺の口内を蹂躙していく。 ふわりと、あのダマスクローズの香りが俺の肺を満たす。 その甘く重厚な香りは、思考を痺れさせ、俺をより深い堕落へと誘っていた。
「んむっ……ちゅぅっ……じゅるっ……♥」
そして、唇を離すと、彼女は言った。
「じゃあ……由美さんなんて、もういらないですよねぇ?♥」
その言葉は、俺の最後の良心を断ち切るための刃だった。
「そ、それは……」
「いらないって言ってください♥」
彼女の手が、再びペニスを握りしめ、激しく動かし始める。
「由美さんじゃ満足できない♥美玲さんのオモチャになりたい♥って……言ってくださいよぉ♥」
「あぁっ……! ああっ……!」
快感が思考を塗りつぶしていく。 由美の笑顔が、走馬灯のように浮かんでは、美玲の与える強烈な快楽にかき消されていく。
「言わないとぉ……一生イかせませんよぉ?♥」
「う、うぅっ……!」
「このままぁ、金玉が破裂するまでぇ、ずーっと寸止めしちゃいますからねぇ♥」
彼女の指が、尿道の入り口をカリカリと引っ掻く。
「ひいぃっ! いう! いいますっ……!」
俺は叫んだ。
「ゆ、由美なんて……いらないっ……! 満足できないっ……!」
「もっと大きな声でぇ♥」
「美玲さんのっ……オモチャになりたいっ! 美玲さんがいいっ……!」
口にしてしまった。 決定的な裏切りの言葉を。 その瞬間、俺の中で何かが壊れた。 罪悪感が消え失せ、代わりに背徳的な解放感が押し寄せてきた。
「あは♥言っちゃいましたねぇ♥もう戻れませんよぉ♥」
美玲は恍惚とした表情で俺を見下ろす。
「悪い子……♥彼女を裏切ってぇ、変態になっちゃったんですねぇ♥」
「はいっ……俺は変態ですっ……! だから、お願い……!」
「いいですよぉ♥ご褒美にぃ……天国、見せてあげますねぇ♥」
美玲は腰を浮かせると、俺の顔の上に跨った。 目の前に、濡れそぼった秘部が迫る。
「まずはぁ……私を気持ちよくしてくださいねぇ♥」
「えっ……」
「舐めてください♥たっぷりとぉ♥」
彼女は俺の顔に秘部を押し付けた。 強烈な雌の匂いが、鼻腔を占領する。 俺は無我夢中で舌を突き出し、彼女の秘肉を舐め上げた。
「んぁっ……♥そこっ……いいっ……♥」
美玲の腰がビクンと跳ねる。 俺は彼女のクリトリスを吸い、舌先で弾き、愛液を啜った。
「あぁっ、健司さん……舌、上手ぅ……♥由美さんにも、こうしてあげてたんですかぁ?♥」
またしても、追い打ちのような言葉。 だが、今の俺にはそれが最高のスパイスだった。
「ちがっ……美玲さんにだけっ……!」
「ふふ、嘘つきぃ♥でも、気持ちいいから許してあげますぅ♥」
彼女は俺の顔の上で腰をグラインドさせながら、同時に手を伸ばし、俺のペニスを握った。
「じゃあ……一緒にイきましょうかぁ♥」
彼女の手が、高速で上下する。 ぬちゃ、ぬちゃ、ぬちゃ、と湿った音が部屋に響き渡る。 上では彼女の愛液を啜り、下では彼女の手に扱かれる。 視界は彼女の秘部と、太ももで埋め尽くされている。
「あぁっ、いくっ……! 美玲さん、いくっ……!」
「私もっ……! 一緒にっ……!」
彼女の腰の動きが激しくなる。 俺の舌も限界まで動き、彼女の核を刺激する。
「あっ、あぁぁぁっ……!!」
美玲の体が弓なりに反り、俺の顔に大量の愛液を噴き出した。 同時に、俺のペニスも限界を迎え、堰を切ったように精液を放出した。
「どびゅっ……! あぁぁっ……! 出るっ、出るぅっ……!」
彼女の手の中に、次々と白濁した液が吐き出されていく。 由美のために取っておくはずだった、愛の結晶。 それを、俺はこの悪魔のような女に、全て捧げてしまったのだ。
「はぁっ……はぁっ……んんっ……♥」
美玲は脱力し、俺の顔の上に覆いかぶさるように倒れ込んだ。 俺の顔は、彼女の愛液と汗でぐしょぐしょに濡れていた。 生温かい感触と、強烈な匂い。 だが、不思議と不快感はなかった。 むしろ、深い充足感が俺を包んでいた。
しばらくして、美玲が体を起こした。 彼女の手には、俺の精液がべっとりと付着している。
「すごい量……♥たっぷりと出しましたねぇ♥」
彼女はその手を俺に見せつけ、指についた精液をペロリと舐めた。
「んっ……♥変態さんの味ぃ♥」
俺は荒い息を吐きながら、呆然とその光景を見つめていた。 手首の拘束はまだ解かれていない。
「ねぇ、健司さん♥」
美玲が妖艶に微笑みかける。
「すっきりしましたかぁ?♥」
「は……はい……」
「でもぉ……これはまだ、始まりですよぉ?♥」
「えっ……」
「言ったでしょう?♥たっぷりと、骨の髄まで溶かしてあげるってぇ♥」
彼女は、まだ半勃ちの状態にある俺のペニスを、指先でツンと突いた。
「ほら♥まだ元気じゃないですかぁ♥」
「そ、そんな……もう無理です……」
「無理じゃないですぅ♥私がぁ、何度でも元気にしてあげますからぁ♥」
彼女は俺の顔を両手で挟み込み、深い深いキスをした。 そして、耳元で囁く。
「朝までぇ……由美さんのことなんて忘れちゃうくらいぃ、たくさんイかせてあげますねぇ♥」
その言葉を聞いた瞬間、俺のペニスが再びドクンと脈打った。 もはや、逃げる場所はない。 帰る場所もない。
スマホが再び振動し、テーブルの上でブブブと音を立てていたが、俺はもうそちらを見ることすらしなかった。 俺はただ、目の前の美玲に縋りつくように、懇願した。
「はい……もっと……もっと、めちゃくちゃにしてください……美玲さん……♥」
堕ちた。 完全に、堕ちた。 俺は由美を捨て、この甘美な地獄を選んだのだ。 美玲の笑い声が、夜の帳に溶けていった。 これから始まる、長く淫らな夜の合図のように。
「休憩なんてぇ……ありませんよぉ♥」
美玲の言葉は、甘美な宣告だった。 彼女はベッドサイドの引き出しから、新たな道具を取り出した。 それは、ピンク色のローションと、奇妙な形をしたガラス製の棒のようなものだった。
「健司さん……後ろの穴はぁ、開発済みですかぁ?♥」
「えっ……う、うしろ……?」
美玲は一度、ヘッドボードに結び付けた紐を解いた。 自由になったと思ったのも束の間、今度は俺の手を背中に回させ、再びきつく縛り上げた。
「うつ伏せになってくださいねぇ♥」
「あ……」
抵抗する術を完全に封じられ、俺は大人しくベッドに顔を伏せる。
「ふふ、お尻の穴……ひくひくしてぇ、可愛いですねぇ♥」
冷たいローションが、臀部の割れ目に垂らされる。 ツーッとお尻の谷間を伝い、敏感な菊花へと流れ込む冷気。
「ひあっ……!」
「力抜いてくださいねぇ♥痛くしちゃいますよぉ♥」
美玲の指が、ぬるりとした感触と共に、閉ざされた入口を弄り始めた。 皺を一つ一つ丁寧に伸ばし、押し広げ、中へと侵入の機会を窺う。
「や、やめて……そこは汚い……」
「汚くないですよぉ♥ここにはぁ、男の人をダメにしちゃうスイッチがあるんですからぁ♥」
彼女の指先が、抵抗する括約筋をこじ開け、第一関節まで侵入した。
「ぐぅっ……! 入っ……てる……!」
「はい、入りましたぁ♥きつい……締め付けすごぉい♥」
指が中で蠢く。 異物感と、得体の知れない圧迫感。 だが、美玲が指を曲げ、腸壁の”ある一点”を擦った瞬間、俺の体はベッドの上で跳ね上がった。
「あぎぃっ!?」
脳天を突き抜けるような、強烈な閃光。 ペニスの奥が、触れてもいないのにジンジンと熱く痺れた。
「ここですかぁ?♥」
「あぁっ! そこっ、だめっ! 変な感じするぅっ……!」
「変な感じぃ?♥気持ちいいの間違いじゃないですかぁ?♥」
カリカリ、と爪先で前立腺を引っ掻かれる。 そのたびに、萎えていたはずのペニスが、ビクン、ビクンと脈打ち、みるみるうちに鎌首をもたげていく。
「ほらぁ♥見てくださいよぉ♥お尻いじられただけでぇ、こんなに元気になっちゃってぇ♥」
美玲は俺の腰を持ち上げ、股の間に鏡を差し込んだ。 鏡に映っていたのは、お尻に指を突っ込まれながら、ペニスをガチガチに勃起させている、浅ましい自分の姿だった。
「いやぁっ……見ないでぇ……!」
「これが本当の健司さんですよぉ♥変態さん♥」
「ちがうっ……うあぁっ♥」
美玲は指を抜き、代わりにガラス製の玩具をあてがった。
「もっと奥までぇ……気持ちよくしてあげますねぇ♥」
ズチュッ……ズポッ……。 硬質な異物が、粘膜を押し広げながら深淵へと沈んでいく。
「あぐぅぅぅっ……!! おっきい……入ってるぅぅっ……!」
「ふふ、全部入っちゃいましたぁ♥」
美玲は玩具を巧みに操り、前立腺をグリグリと抉るように刺激し始めた。
「ひいぃぃっ! イくっ! イっちゃう! お尻でイっちゃうぅっ!」
「いいですよぉ♥“オスイキ”じゃなくてぇ、“メスイキ”……教えてあげますからぁ♥」
彼女の空いた手が、再び俺の乳首を捉えた。
「あぎゃぁぁっ!?」
下からは前立腺を突き上げられ、上からは乳首をギリギリと捻り上げられる。 快楽の濁流が、俺の自我を跡形もなく押し流していく。
「由美さんはぁ、こんなことしてくれませんよねぇ?♥」
「して、くれないっ……! 美玲さんだけっ……!」
「そう♥私だけ♥私はぁ、健司さんのご主人様ですからねぇ♥」
「ご主人様ぁっ……! うあぁぁっ……!」
ズプッ、ズプッ、ズプッ! 激しさを増すピストン。 俺の口からは、男とは思えないような甲高い嬌声が漏れ続ける。
「あぁっ、あぁっ、そこっ、そこいいぃぃっ! おかしくなるぅっ!」
「なってください♥壊れちゃえ♥」
美玲が耳元で囁くと同時、彼女は玩具を一番奥まで突き入れ、激しくかき回した。
「――――ッッ!!?」
声にならない絶叫。 射精の感覚とは違う、全身が溶けて流れ出すような、底なしの脱力感と幸福感。 ペニスの先から、ポタポタと透明な液が垂れ落ちる。
「すごぉい♥よだれみたいに我慢汁垂らしてぇ♥完全にメスになっちゃいましたねぇ♥」
俺はシーツに顔を埋め、ガクガクと痙攣していた。 もう、男としての尊厳など欠片も残っていない。 あるのは、美玲に与えられる快楽への渇望だけだった。
「休憩はまだですよぉ♥」
美玲は俺を仰向けに戻すと、今度は自らの体を俺の上に重ねてきた。
「今度はぁ……私の中に入れてあげますからぁ♥」
彼女は俺のペニスを握り、自身の濡れそぼった秘部に導いた。
「入れて……いいんですか……?」
「由美さん以外の人に入れるのぉ……初めてですかぁ?♥」
「は、はい……」
「ふふ、背徳の味♥たっぷりと味わってくださいねぇ♥」
美玲が腰を沈める。 ヌプッ……。 熱く、吸い付くような肉壁が、俺の分身を飲み込んでいく。
「あぁっ……あつっ……! きつい……!」
「んぁっ……♥健司さんのおちんちん……硬い……♥」
根元まで収まると、彼女は深い溜息をつき、俺の首に腕を回した。 そして、ゆっくりと腰を揺らし始める。
「由美さんのマンコとはぁ……違いますかぁ?♥」
「ちが……違いますっ……! 美玲さんのが……いいっ……!」
「どこがぁ?♥具体的に言ってくださいよぉ♥」
ねっとりと絡みつくような腰使い。 内壁の襞が、意思を持っているかのようにペニスに吸い付き、締め付けてくる。
「締め付けが……すごいっ……! 熱いし……ぬるぬるしてて……!」
「あは♥正直でいい子♥」
美玲は腰の動きを早めた。 パンッ、パンッ、パンッ! 肉と肉がぶつかり合う音が、部屋に響き渡る。
「あぁっ、美玲さんっ、美玲さんっ……!」
俺は彼女の腰にしがみつき、突き上げる衝動に身を任せた。 由美とのセックスは、いつも優しく、愛を確かめ合うような行為だった。 だが、これは違う。 これは暴力的なまでの快楽の搾取であり、魂の略奪だった。
「もっと……もっと奥までぇ……♥」
「突きますっ! 奥までっ、全部っ……!」
俺は獣のように腰を振り立てた。 理性のタガが外れた男は、ただの種馬と化していた。 その時、床に落ちていた俺のスマホが、またしても震えた。 今度は着信音が鳴り響く。 美玲が動きを止めずに、手を伸ばしてスマホを拾い上げる。
「あらぁ……また由美さんですよぉ♥」
「っ……!」
画面には、由美の泣きそうな顔のアイコンが表示されている。
「しつこいですねぇ♥」
美玲はスマホを俺の目の前にかざした。
「出ますかぁ?♥」
「で、でないっ……切って……!」
「だめ♥このままぁ……繋げちゃいましょうかぁ♥」
「えっ……!?」
美玲は通話ボタンを押し、スピーカーモードに切り替えた。
『もしもし!? 健司!? どうしたの!? 事故に巻き込まれたりしてないよね!?』
由美の悲痛な叫び声が、部屋に響く。 電話の向こうからは、落ち着いたジャズのBGMと、食器が触れ合う音が微かに聞こえてくる。 彼女はまだ、レストランで待っていたのだ。
俺のペニスは、美玲の膣内でビクンと跳ねた。
「あ……ゆ、由美……」
『健司っ! よかった……! 全然連絡つかないから……今どこなの?』
美玲がニヤリと笑い、腰を激しく打ち付けた。
「あぐっ……! うぅっ……!」
『え? 何? 今の声……』
美玲は人差し指を唇に当て、静かにしろと合図を送る。 だが、その腰使いは容赦がない。 グリグリと内壁で亀頭を擦り上げ、クリトリスを俺の恥骨に押し付けてくる。
「い、いま……ちょっと……トイレ……」
苦しい言い訳。
『トイレ? 駅の? ……ねぇ、なんか変だよ? 本当に大丈夫? お店の人も……ずっと待ってくれてるの……私、一人で……』
彼女の不安そうな声が、胸を締め付ける。 周囲の客が帰っていく中、一人テーブルに残されている彼女の姿が脳裏に浮かぶ。 だが、美玲が俺の乳首を強く抓った瞬間、そんな情景は快楽の白濁に塗りつぶされた。
「ぎっ……!!」
『健司!?』
美玲が口パクで囁く。
『別れるって言って』
「なっ……」
俺は激しく首を振った。 それだけは。それだけはできない。 だが、美玲の目は笑っていなかった。 彼女は腰を浮かせ、ペニスを抜きかけると、再び勢いよく座り込んだ。
ズドォォン!!
子宮口を強打される衝撃。
「あがぁぁっ!! き、きもちいぃぃぃっ!!」
『け、健司……? 誰かいるの……? 女の人……?』
由美の声が震え始めた。
『嘘でしょ……? 私、待ってるのに……今日は記念日なのに……』
美玲は俺の耳元に唇を寄せ、甘く、残酷に囁いた。
「言わないとぉ……ここで大声で喘いじゃいますよぉ?♥」
「や、やめて……!」
「じゃあ、言って♥……由美さんなんて、もういらないって♥」
俺の心は、快楽と恐怖の狭間で引き裂かれそうだった。 だが、体は正直だった。 美玲の蜜壺に締め付けられる快感は、由美への愛着を遥かに凌駕していたのだ。
「ゆ、由美……」
『な、なに……?』
「ごめん……俺……もう行けない……」
『え……どういうこと……?』
美玲が腰を回す。 ねっとりと、こねくり回すように。
「俺……他に……好きな人ができたんだ……」
『うそ……嘘でしょ……? だって、今日……』
「嘘じゃないっ……! 今の彼女の方が……ずっと……ずっといいんだっ……!」
言わされた言葉。 だが、それは今の俺の偽らざる本心でもあった。
『そんな……ひどい……健司……っ』
由美の泣き声が聞こえた。 胸が痛むはずだった。 だが、それ以上に、下半身の疼きが爆発しそうだった。 美玲は満足げに笑い、俺に口づけをした。
「よく言えましたねぇ♥ご褒美にぃ……中出し、許してあげますよぉ♥」
「っ!! 美玲さんっ!!」
「イって♥私の赤ちゃん……作っちゃってください♥」
その言葉が、最後の引き金だった。
「あぁぁっ! いくっ! 由美っ、ごめんっ! 美玲さんっ、美玲さんんんっ!!」
『えっ……健司……? なに……その名前……』
俺はスマホに向かって、ではなく、目の前の美玲に向かって絶叫し、腰を突き上げた。
ドピュッ! ドピュッ! ドピュゥゥッ!
由美との未来のために蓄えていた種が、美玲の胎内へと勢いよく注ぎ込まれていく。
「あぁっ♥熱ぅい♥すごぉい♥」
美玲は俺を抱きしめ、注がれる精液の熱さを全身で受け止めていた。 スマホからは、由美の嗚咽と、通話が切れる無機質な電子音が響いた。
プツッ。 ツーツーツー……。
終わった。 俺の五年間の恋が。 俺のまともな人生が。 何もかもが、白濁した快楽の中に溶けて消えた。
翌朝。 カーテンの隙間から差し込む朝日で、俺は目を覚ました。 頭が重い。全身が気怠い。 隣を見ると、美玲が裸のまま、天使のような寝顔で眠っていた。 昨夜の狂乱が、嘘のように静かな朝だった。
ふと、床に転がっているスマホを拾い上げる。 由美からの連絡は、あれ以来途絶えていた。 SNSのステータスを見ると、彼女のアカウントは削除されていた。
「……はは……」
乾いた笑いが漏れる。 俺は本当に、全てを失ったのだ。 後悔? いや、不思議と胸の中にあったのは、清々しいほどの空虚感と、そして……
「んぅ……健司さん……?♥」
美玲が目を覚まし、とろんとした瞳で俺を見上げた。
「おはよぉございますぅ♥」
その笑顔を見た瞬間、俺の股間がズキリと疼いた。 あれだけ出したのに。 あれだけ搾り取られたのに。 俺の体は、まだ彼女を求めていた。
「美玲さん……」
「まだ元気なんですかぁ?♥変態さんですねぇ♥」
彼女はシーツの中に手を潜り込ませ、俺のモノを握った。
「由美さん……いなくなっちゃいましたねぇ♥」
「はい……俺にはもう、美玲さんしかいません……」
「ふふ、嬉しいですぅ♥じゃあ……これからずーっと、私のペットとして可愛がってあげますねぇ♥」
「はいっ……! お願いしますっ……!」
俺は彼女に抱きつき、その豊満な胸に顔を埋めた。 ダマスクローズの香りが、俺の新しい世界の全てだった。
もう、あの満員電車に乗ることも、由美と真面目なデートをすることもないだろう。 ここにあるのは、底なしの快楽と、甘美な堕落だけ。 俺は自ら望んで、この蜘蛛の糸に絡め取られたのだ。
「さぁ……朝の運動、しましょうかぁ♥」
美玲が俺の上に跨る。 俺は嬉々として、その蜜壺を受け入れた。 地獄への片道切符を、俺は笑顔で握りしめていた。