完璧だった俺の人生は、ヤンママとの出会いで「寸止めATM」に変わった
完璧な人生を歩むエリート商社マン、高槻圭介。 ふと魔が差して立ち入った場末のパチンコホールで、彼はヤンママ風の女「美咲」と出会う。 「お願い……お金、貸してくれませんか?」 その一言から始まった関係は、圭介の理性を蝕んでいく。
俺の人生は、一種の芸術品だった。
都心に聳え立つガラス張りのオフィスタワー、その一室から東京の街を見下ろし、数億単位の数字をこともなげに動かす。誰もが羨む大手商社に勤め、入社以来トップクラスの成績を維持してきた。年収はとっくに8桁を超え、住まいは港区のタワーマンション。スーツはオーダーメイド、腕時計はスイスの高級ブランド。週末には気の置けない仲間と会員制のバーでグラスを傾ける。
完璧な経歴、完璧な生活。俺、高槻圭介(たかつき けいすけ)の人生は、すべてが計算通りに進むチェス盤のようなものだった。無駄な動きはなく、常に最適解を選び続けてきた自負がある。
そんな俺が、どうしてこんな場所にいるのだろうか。
轟音、紫煙、そしてむせ返るような人間の熱気。大型の商業プロジェクトを成功させ、珍しく手に入れた平日の午後の休暇。アドレナリンが抜けきらない身体を持て余し、ふと魔が差したのだ。普段なら高級車のディーラーを冷やかすか、美術館にでも足を運ぶところを、なぜか俺は場末のパチンコホールに吸い寄せられていた。
整然とした俺の世界とは真逆の、混沌とした空間。それが妙に刺激的だった。使い方もろくに知らぬまま、適当な台に座り、とりあえず千円札を一枚、サンドに恐る恐る差し込んだ。けたたましい電子音と共に、小さな銀色の玉が盤面を弾ける。意味も分からずハンドルを握り続けていると、隣の席から甘い声が聞こえた。
「あー、もうっ!またダメ……」
視線を向けると、そこに彼女がいた。
少し派手な金髪に、長いまつ毛が縁取る大きな瞳。唇は潤んだピンク色で、服装は身体のラインがくっきりと出るタイトなニットとデニムのホットパンツ。若々しいが、どこか生活に疲れたような、それでいて諦めきれない強さが滲む不思議な雰囲気。年の頃は二十代半ばだろうか。いわゆる、ヤンママというやつだ。
彼女は液晶画面を睨みつけ、悔しそうに唇を噛んでいる。その仕草一つひとつが、俺の周りにいる洗練された女たちにはない、生々しい色気を放っていた。
俺は自分の台に視線を戻し、興味がないふりを装った。だが、意識は完全に隣の彼女に奪われていた。時折漏れる嬌声のようなため息、大当たりした他の客を見て羨ましそうに細める目、そのすべてが俺の心をざわつかせた。
しばらくして、俺の台が突如として狂ったような音と光を放ち始めた。ビギナーズラックというやつだろう。液晶画面には派手な演出が流れ、あれよあれよといううちに出玉がドル箱を埋めていく。
「すごーい!お兄さん、めちゃくちゃツイてるじゃないですか!」
隣の彼女が、目を輝かせて俺のドル箱を覗き込んできた。さっきまでの不機嫌そうな顔はどこへやら、子供のような無邪気な笑顔だ。距離が近い。ふわりと、安っぽいが甘い香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
「ああ、まあ……」
俺は曖昧に頷いた。エリートサラリーマンとしての仮面が、この空間ではうまく機能しない。
「いいなあ。私、もう全然ダメ。今日のお給料、ほとんどなくなっちゃった……」
彼女はそう言って、自分の台の前に積まれたわずかな玉を寂しそうに見つめた。
「……そうか」
俺に何ができるわけでもない。そう思って突き放そうとした時、彼女は意を決したように俺の顔を見上げた。潤んだ瞳が、何かを訴えかけている。
「あの……不躾なお願いなんですけど……」
「……なんだ?」
「少しだけ、お金、貸してもらえませんか……?あと一回、あと一回だけ回せたら、絶対当たる気がするんです。お願い!」
両手を胸の前で合わせ、懇願するような上目遣い。こういう手合いには慣れている。職場の後輩や取引先の女が、同じような目で俺にプロジェクトの承認や食事の誘いをねだってきた。だが、彼女のそれは、もっと切実で、抗いがたい何かがあった。
「悪いが、見ず知らずの人間に金を貸す趣味はなくてね」
俺は冷静に、そして冷たく言い放った。これが俺の世界のルールだ。
「……そっか。そうですよね、ごめんなさい」
彼女はしょんぼりと肩を落とし、自分の台に向き直った。これで終わりだ。俺は自分の勝利に集中しようとした。だが、その時だった。テーブルの下で、何かが俺の太腿に触れた。
驚いて視線を落とすと、彼女の手が俺のスーツのスラックスを優しく撫でていた。
「……っ、おい」
「お願い……。このままじゃ、今夜のミルク代もなくなっちゃうの……」
吐息がかかるほど近くで囁かれ、指はゆっくりと脚の付け根へと這い上がってくる。まずい。ここはパチンコホールだ。周りには大勢の客がいる。スリルと背徳感が、俺の冷静さをいとも簡単に蝕んでいく。
彼女の指が、硬くなり始めた俺の屹立の輪郭をなぞった。
「……すごい。お兄さん、こんなに……」
くすくすと悪戯っぽく笑う声。
「トイレ、行かない?」
正気か? ここは公共の場だ。俺のような人間がそんな……。断ろうとした俺の口を封じるように、彼女はテーブルの下でさらに大胆に指を動かした。理性が悲鳴を上げ、本能がそれをねじ伏せる。
気がつけば、俺は店の奥にある薄暗いトイレの個室にいた。背後でカチャリと鍵の閉まる音が響く。狭い空間に、彼女の甘い匂いが充満する。
「ね、さっきのお願い、聞いてくれる?」
彼女は俺のネクタイをゆるめながら、吐息混じりに囁いた。理性が警鐘を鳴らす。こんなことは間違っている。だが、身体は正直だった。ベルトのバックルを外され、ファスナーが引き下ろされる。窮屈な下着から解放された俺の昂りは、すでに限界まで熱を帯びていた。
「すごい……本当に、すごい……」
感嘆の声を漏らしながら、彼女はそこにひざまずいた。そして、熱い舌が先端をぺろりと舐め上げる。
「ひっ……!」
思わず声が漏れた。全身に電撃のような快感が走り抜ける。巧みだった。舌先だけで先端をくすぐり、唇で優しく包み込む。ゆっくりと、しかし確実に、俺の昂りは彼女の口腔内に飲み込まれていく。
じゅ、じゅ、と生々しい水音が個室に響く。俺は壁に手をつき、喘ぎを堪えるのに必死だった。快感の波が、思考を麻痺させていく。もうどうなってもいい。このまま彼女にすべてを委ねてしまいたい。
腰が震え、腹の奥から熱い衝動が突き上げてくる。もう、出る。そう確信した瞬間、彼女の動きがぴたりと止まった。
「……え?」
口が離れ、濡れた昂りが空気に晒される。見下ろすと、彼女が潤んだ瞳で俺を見上げていた。唇の端から、俺の先走りが糸を引いている。
「ねぇ、お金……貸してくれたら、続き、してあげる……♡」
悪魔の囁きだった。
絶頂の寸前で断ち切られた快感。体内に燻る熱は行き場を失い、猛烈な焦燥感となって俺を苛む。
「……っ、いくらだ」
プライドも何もかも投げ捨てて、俺はかすれた声で尋ねた。
「んー……とりあえず、三万、かな?」
俺は震える手で財布から三枚の紙幣を抜き取り、彼女に渡した。彼女はそれをひったくるように受け取ると、にっこりと微笑んだ。
「ありがとう!これで絶対取り返すから!」
そして、俺の昂りに一度だけちゅっとキスをすると、あっさりと個室の鍵を開け、出て行ってしまった。
一人残された俺は、なすすべもなくそこに立ち尽くすしかなかった。ズボンの下では、行き場のない熱を持て余した昂りが、虚しく脈打っていた。
翌日、俺は再びあのパチンコホールにいた。
昨日の屈辱を晴らすためだ。いや、そう自分に言い聞かせているだけなのは分かっていた。本当は、もう一度彼女に会いたかったのだ。そして、昨日の続きを、今度こそ最後まで……。
昨日と同じ台に座ってしばらくすると、案の定、彼女がやってきた。
「あ、圭介さん!昨日ぶりー」
彼女――美咲は、俺の名前をどこで知ったのか、悪びれもなく馴れ馴れしく声をかけてきた。
「昨日のおかげで、ちょっとだけ勝てたんです。ありがと♡」
屈託のない笑顔。昨日の行為が、まるでなかったことのように。その態度が、俺の征服欲を妙に煽った。今度こそ、この女を俺の意のままに組み敷いてやる。
だが、その日の展開も昨日と酷似していた。俺は勝ち、彼女は負ける。そして、「お願い……」という甘い囁き。
「同じ手が何度も通じると思うな」
俺は冷たく言い放った。だが、美咲は動じない。
「じゃあ、違う手ならいい?」
彼女は俺の腕を取り、店の外へと引っ張っていく。抵抗する間もなく、俺は自分の高級セダンの助手席に彼女を乗せていた。
「圭介さんの車、かっこいいね」
そう言いながら、彼女は俺の膝の上に跨ってきた。
「おい、何を……」
「昨日のお礼、まだだったでしょ?」
美咲は俺のシャツのボタンを外し始め、逞しいと褒めながら胸板を撫でた。そして、小さな突起に顔を寄せる。
「ん……っ」
温かく湿った舌が、俺の乳首をちろりと舐めた。
「ひぁっ!?」
予想外の刺激に、身体がびくんと跳ねる。男の乳首をこんなに丁寧に、執拗に愛撫されたことなどなかった。吸われ、噛まれ、舌で転がされるたびに、脳が痺れるような快感が背筋を駆け上る。
「ここ、気持ちいいんだ……?圭介さん、かわいい……」
くすくすと笑いながら、美咲の責めはさらにねちっこくなる。俺はシートに身体を押し付けられ、なすすべなく喘いだ。
彼女の手が、再び俺の股間へと伸びる。ズボンの上から優しく揉みしだかれ、指が巧みに竿をしごき始めた。乳首と股間、二方向からの攻撃に、俺の理性は再び溶け出していく。
「はぁ……っ、ぁ……」
「もうこんなに……。イきたくなっちゃった?」
耳元で囁かれ、指の動きが速度を増す。もうダメだ。昨日とは違う、もっと強烈な快感が俺を支配する。
そして、まただ。
絶頂の寸前で、すべての動きが止まる。
「……っ、なぜ……」
「ねぇ、お願い……。今日も、貸して……?貸してくれたら、イかせてあげる……♡」
潤んだ瞳、上気した頬、乱れた呼吸。彼女は俺の上で腰を揺らしながら、懇願する。開発された乳首がずきずきと疼き、股間では寸止めされた熱が暴れている。
俺は、またしても負けた。
ATMで五万円を下ろし、彼女に渡した。彼女は「大好き!」と俺の頬にキスをすると、満足そうに車から降りていった。
それからだった。俺の完璧だった日常に、美咲という名の亀裂が走り始めたのは。
週に二度、三度と、俺はあのパチンコホールに通うようになった。目的はパチンコではない。美咲に会うためだ。
会うたびに、俺たちは体を重ねた。店のトイレで、車の中で、時には近くのラブホテルで。しかし、決して最後まで行為が満たされることはなかった。
パイズリ、足コキ、手コキ……。彼女はあらゆる手管で俺を焦らし、快感の頂点へと導いては、寸前で突き放す。そして、その代償として金を要求する。
「圭介さんがイくところ、見てみたいなぁ。でも、そのためには軍資金がなくっちゃ……」
「このおっぱい、気持ちいい?もっとズリズリしてほしかったら、お願い、聞いてくれるよね?」
俺は毎回「これが最後だ」と心に誓う。だが、彼女の巧みな話術と、脳に刻み込まれた寸止めの快感には抗えなかった。渡す金額は五万、十万と膨れ上がっていった。俺のプライドは日に日に削り取られ、代わりに美咲への歪んだ執着が膨らんでいった。
彼女を支配したい。その思いとは裏腹に、俺は完全に彼女に支配されていた。金を渡し、快感を焦らされ、虚しく帰宅する。その繰り返し。俺は彼女にとって、ただの便利なATMであり、性欲のはけ口ですらない、寸止め専用のオモチャだった。
それでも、俺はこの関係から抜け出せなかった。彼女に蔑まれ、利用されることに、倒錯した喜びさえ感じ始めている自分に気づいていた。エリートとしての仮面の下で、俺という人間は、ゆっくりと、しかし確実に壊れていっていた。
そんなある日の夜、美咲から初めてメッセージが届いた。
『今日はうちに来ない?子供、実家に預けてるから……ゆっくり、お礼させて♡』
心臓が大きく跳ねた。ついに、この時が来たのだ。寸止めではない、本当のセックス。彼女を完全に俺のものにできる。今までの屈辱をすべて晴らし、俺が彼女を支配するのだ。
俺は逸る心を抑え、指定されたアパートへと車を走らせた。古びた木造アパートの一室。ドアを開けると、いつもの甘い香水の匂いと、蠱惑的な笑顔の美咲が立っていた。
「待ってたよ、圭介さん」
部屋に招き入れられ、俺は期待に胸を膨らませた。しかし、その期待は、リビングのドアを開けた瞬間に、絶望へと叩き落とされることになる。
「「いらっしゃーい」」
そこにいたのは、美咲だけではなかった。
美咲とよく似た雰囲気の、派手な服装の女が二人。一人はショートカットで気の強そうな顔立ち、もう一人はロングヘアでけだるげな色気を漂わせている。
「圭介さん、いつも美咲がお世話になってまーす」
「ウチらのパチンコ代も稼いでくれるんでしょ?」
ショートカットの女が、にやにやと笑いながら言う。
「ATMだって聞いてるよー?今日もいっぱい出してくれるんだよね?おカネと……こっち♡」
ロングヘアの女が、自分の股間をいやらしく指差した。
罠だ。
俺は瞬時に状況を理解し、踵を返そうとした。だが、背後で美咲がドアに鍵をかける音が響く。
「逃がさないよ、圭介さん。今日こそ、たーっぷりお礼してあげるんだから」
三人の女が、じりじりと俺を取り囲む。その目は、獲物を前にした獣のように、飢えた光を宿していた。
「な……何の真似だ」
俺は虚勢を張り、声を絞り出した。だが、その声は自分でも情けないほどに震えていた。
「真似って?言ったでしょ、お礼だって」
美咲が俺の胸に指を這わせる。
「いつも中途半端で、圭介さん欲求不満だったでしょ?だから今日は、アキナとユイカにも手伝ってもらって、思う存分気持ちよくさせてあげようと思って」
アキナと呼ばれたショートカットの女が、俺の背後に回り込み、肩に腕を回してきた。
「そーそー。美咲から聞いてるよ?乳首、弱いんだって?」
耳元で囁かれ、アキナの指が俺のシャツの上から乳首を弄る。ぞくり、と背筋に悪寒が走った。
「やめ……」
「やめないよぉ」
ユイカと呼ばれたロングヘアの女が、正面から俺のベルトに手をかけた。
「だって、これからが本番なんだから。ねぇ、ATMさん?」
抵抗する暇もなかった。三人がかりで押さえつけられ、俺はあっという間にソファに押し倒された。スーツが、シャツが、下着が、乱暴に剥ぎ取られていく。エリートとしての最後の鎧が剥がされ、俺はただの裸の男として、三人の女の視線に晒された。
「うわ、ほんとだ。もうこんなに固くしてる」
ユイカが俺の昂りを握りしめ、面白そうに言った。屈辱に顔が熱くなる。だが、身体は正直に反応してしまっていた。
「じゃあ、始めよっか。今日のサービス料、前払いでお願いしよっかな」
美咲が俺のスマホをひったくり、顔認証を無理やり解除させた。そして、ネットバンクのアプリを操作し始める。
「まずは、アキナの口座に三十万、っと」
「次はウチねー。同じく三十万でいーよ」
「圭介さん、お金持ちだから平気だよね?」
俺が何か言う前に、いとも簡単に送金が完了していく。なすすべなく、俺の銀行口座から数字が消えていくのを眺めるしかなかった。
「はい、お支払いありがとー。じゃあ、サービス開始ね♡」
それを合図に、地獄の饗宴が始まった。
美咲が俺の上にまたがり、唇を塞ぐ。深いキスを交わしながら、その豊満な胸が俺の胸板を押しつぶす。アキナは俺の横に座り、執拗に乳首を責め始めた。指でつまみ、爪でカリカリと引っ掻き、そして熱い舌でねっとりと舐め上げる。
「んっ……あ、ぁ……っ!」
「こっちも忘れてないよぉ」
足元では、ユイカが俺の昂りを口に含んでいた。美咲とはまた違う、ねっとりとした舌使い。亀頭を重点的に、吸い上げるように刺激される。
三方向からの、息つく暇もない愛撫。快感と屈辱がごちゃ混ぜになって、俺の思考をぐちゃぐちゃにかき乱す。
「ねぇ、誰が一番気持ちいい?」
アキナが乳首を舐めながら囁く。
「美咲のキス?アタシの乳首責め?それとも、ユイカのフェラ?」
答えられるはずがない。俺はただ、喘ぎ声を漏らしながら身を捩るだけだ。
「答えないと、イかせてあげないよ?」
その言葉通り、絶頂が近づくと、ユイカの口が離れ、アキナの指が止まる。寸止めだ。ここでも、また。
「ほら、言ってごらん?」
美咲が俺の唇を解放し、見下ろしてくる。その目は、嗜虐的な喜びに満ちていた。
「……っ、ぜ、んぶ……」
「ふふ、素直でよろしい」
満足そうに笑うと、三人の責めが再開される。そして、また寸止め。それを何度も、何度も繰り返された。快感の波に乗り上げては、寸前で突き落とされる。脳が焼き切れそうだった。
「あはは、顔すごいことになってる」
「もうイきたくてたまらないって顔だね」
「でも、まだダメ。もっとお金くれるって言わなきゃ、イかせない」
再び、俺のスマホが操作される。追加の送金。俺の意思など関係なく、貯蓄は面白いように減っていく。金が送金されるたびに、彼女たちはご褒美だと言って、少しだけ長く責めてくれる。俺は、快感を得るために金を払う、まるで調教された獣だった。
意識が朦朧としてきた。時間の感覚も、自尊心も、すべてが溶けてなくなっていく。ただ、三人の女に与えられる快感だけが、世界のすべてだった。
明日は大事な役員会議があったはずだ。数億円のプロジェクトの決裁も残っている。だが、今の俺には目の前の乳首を弄る指と、股間を貪る濡れた口の方が重要だった。積み上げてきたキャリアが、音を立てて崩れ去っていく。その絶望感が、奇妙なほどに興奮を煽った。
「そろそろ、一発くらい出してあげよっか?」
美咲が言った。その言葉に、俺の身体が希望に打ち震える。
「じゃあ、せーのでイかせよ!」
アキナとユイカも同意し、三人の動きが激しさを増した。
美咲が腰を動かし、俺の昂りを自分の熱い秘唇に導く。アキナの指が乳首を強くつねり上げ、ユイカが俺の睾丸を優しく揉みしだく。
すべての快感が一点に集中し、爆発する。
「あぁぁぁぁっ!」
俺は叫び、美咲の体内で熱い奔流を解き放った。長い、長い射精。今まで溜め込まれたものが、すべて搾り出されていく。
だが、終わりではなかった。
ぐったりと脱力する俺をよそに、彼女たちは笑っている。
「はい、一回目おわりー」
「次はアタシの番ね」
アキナが美咲と入れ替わり、俺の上にまたがる。
「ちょ……もう、無理だ……」
「何言ってんの?まだまだでしょ?ATMなんだから、空っぽになるまで出し切ってもらわなきゃ」
萎えかけた昂りを、アキナが有無を言わさず口に含む。信じられないことに、俺の身体は再び反応を始めていた。そして、ユイカと美咲の手が、また俺の乳首や全身を愛撫し始める。
絶望的な快楽のループ。
俺は、何度も、何度も、射精させられた。アキナに、ユイカに、そしてまた美咲に。最後の方は、もう精液など出なかった。それでも彼女たちは、乾いた喘ぎを漏らす俺を犯し続けた。金も、精子も、体力も、気力も、すべてを根こそぎ搾り取られていった。
夜が明け、窓から朝日が差し込んできた頃、ようやく饗宴は終わった。
俺はソファの上に、抜け殻のように転がっていた。財布は空になり、スマホの銀行アプリを開く気力もない。身体の至る所が痛み、気だるさが鉛のようにまとわりついている。
三人の女たちは、俺の金で買ったであろう酒やスナックを囲み、楽しそうに昨夜の話をしていた。
「圭介さん、最後の方とかマジうけたよね」
「『もう許してください』とか言っちゃってんの」
「でも、体は正直なんだもんねー。かわいい」
彼女たちの会話が、遠くに聞こえる。俺はもう、彼女たちにとって人間ですらないのだ。
やがて、彼女たちは立ち上がった。
「じゃ、稼いだ金でパチンコ行こっか!」
「「おー!」」
楽しそうに部屋を出ていく三人。俺は、その背中をただぼんやりと見送ることしかできなかった。
絶望?いや、それすらも麻痺していた。ただ、空っぽの身体と心に、昨夜の強烈な快感の残滓だけが、微かに燻っている。また、あの指で、あの舌で、あの身体で、めちゃくちゃにされたい。そんな歪んだ欲望が、灰の中から芽生え始めていることに、俺は気づいていた。
その時、ポケットの中でスマホが震えた。かろうじて腕を動かし、画面を見る。美咲からのメッセージだった。
『また明日ね、ATMさん♡』
それを見て、俺の口から乾いた笑いが漏れた。
俺は震える指で、自身のスケジュールアプリを開いた。「明日の役員会議」の予定を削除し、代わりにこう入力する。『パチンコ』と。
完璧だった俺の人生は終わり、獣以下の新しい日常が、今動き出した。